【実録】慶應幼稚舎 受験当日レポ ~人生で一番迷った日~

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試験当日

時系列がメチャクチャですが、記憶が薄れないうちに。
これは、我が家の小学校受験で最も長く、最も濃かった一日の記録です。

慶應幼稚舎。倍率も、集まる家庭の本気度も、他の学校とはまるで違うあの学校を、我が家は受けました。「女の子のフリーの合格はまずありえない。」「今年の女の子は縁故枠ですでに埋まっているらしい。」そんな噂が絶えない某校ですが、合否の結果がどうであれ、我が家のお受験の集大成として受けることを決意しました。正直に言うと、緊張しすぎて記憶が飛んでいる部分もあります。それも含めて、ありのままに書き残しておきたいと思います。

これから幼稚舎を受験するご家庭に、少しでも「当日のイメージ」が伝われば幸いです。

11月某日、朝から悩んでいた。

目の前には、いわゆるネイビーのワンピースと、体操服が並んでいる。

幼稚舎を受けるか。かねてからの志望校だった難関女子校を受けるか。

小学校受験では、こういうことが起こる。試験日程が重なるのだ。心では幼稚舎と決めたものの、理性が邪魔をする。ありがたいことに前受校からは合格をいただいているので、全落ちということはない。それでも迷った。

1週間前に受けた洗足学園は、余裕の一次落ちだった。洗足はペーパー難関校だし、中学受験回避が目的の学校で家庭方針とも合わず、願書にも熱が入らなかった。だからご縁をいただけるとは思っていなかった。それでも「一次で落ちた原因がわからない」ことが、じわじわと不安を煮詰めてくる。私の推測では間違いなくペーパーと熱意のない願書に違いない。でも、もし行動観察で光る子ではなかったのだとしたら?他校で一次も通過しない子が、お受験界で最も「キラリと光る子」が受かるとされている幼稚舎で通用するのか?

そんなことをぐるぐると考えながら、娘と朝食を取った。……気がする。

「気がする」というのは、朝食の記憶がないからだ。多分いつも通りに過ごしたのだと思う。万が一、面接や考査で「朝ごはんは何を食べましたか?」と聞かれるかもしれないので、パンだけではなくオムレツやヨーグルトはあったかもしれない。忘れた。でも、お受験家庭の模範解答のような和食御膳ではなかったと思う。

朝食が終わり、髪をセットした。もう何度も練習した編み込み。某女子校ママの完璧な編み込みには到底及ばないが、自分なりに頑張った。緊張したのか、いつもよりやり直す回数が増えて、少し時間がかかった。当日の朝は、やはり余裕を持って準備するに限る。

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そして、娘に告げた。

「今日は幼稚舎を受けに行こう。体操服に着替えるよ。」

この言葉を口に出した瞬間、私の腹は「本当に」決まった。もう後戻りはできない。

娘は体操服に着替えた。まだ時間があったので(迷っていた女子校は受付時間が早く、朝早く起きていたのだ)、ここ1ヶ月のルーティンだった片足30秒、飛行機バランス、指折り、サーキットの最終チェックをした。とはいえ、飽きても困るのでいつも通りササっと終わらせた。

それから、壁一面に貼った絵画を眺めた。新年長から描きためた体験の軌跡が並んでいる。鳥、動物、将来の夢、日常の出来事……。不恰好な絵だが、どれもイキイキしていて、私は好きだった。

今日まで娘は本当に頑張ってきた。どんな結果であっても、娘はとても良い子である。きっと幼稚舎の先生は、そんな娘を観てくださる。

そう信じて、体操服を着た娘と家を出た。

娘と最寄り駅に向かう道中、何を話したかは覚えていない。ただ、機嫌を損ねてはいけない、自信を無くさせてはいけない。それだけを思って、穏やかな時間が流れていたと思う。

広尾駅に着くと、同じ思いで向かっているのだろう、ネイビーと体操服を着た親子がゾロゾロと天現寺方面へ歩いていた。

緊張が走る。

その時、娘が言った。「あ、ジャックの先生がくれたやつ!」

慌ててカバンから、ジャックの最終日にもらった小粒チョコの袋を取り出した。広尾プラザ近くのベンチに座って、ふたりで食べた。娘は緊張していないのか、チョコを一粒食べ、水筒のお茶を飲み、にっこりしていた。

一息つくと、また同じ服装をした親子の流れに混じって、天現寺橋の歩道橋へ向かった。

校門に着くと、まだ受付時間前だったこともあり、入口の外で待った。そこには、おそらく同じ月に生まれたのだろう女の子たちが並んでいる。思わず、子どもの顔つきや、お母様が有名人ではないかとチラチラ見てしまった。

そして、今更ながら気づいてしまった。

ポニーテールが多い。

お受験でよく見る、いわゆるガッチリジェルで固めた編み込みおさげじゃない!?両サイドはほつれないように編み込みしつつ、最後は一つにまとめてポニーテール。それが幼稚舎スタイルらしい。

「あれ、何か間違えたか?」

一抹の不安を抱えたまま受付時間となり、控え室へ通された。

控え室は、夏の学校見学会でベルトコンベアのように並んで歩いた時以来に見る、歴史ある教室だった。あの時は廊下から数秒眺めて通り過ぎるだけだったのに、今日は椅子が用意されていて、座ることができる。なんと貴重なことか。

靴を履き替えた後、娘とトイレを済ませ、呼び出しの時間まで待った。ここでも何を喋っていたかあまり覚えていない。直前の見直しにと、「トイくんの入試の心構え」の紙を出そうとしたら「もう、それわかったから。」と言われた気がする。

レインボー先生の「小学校受験当日の心構え」
小学校受験当日の心構えを絵を使ってわかりやすく説明。お子さんにどう行動したら良いかを教えてあげてください。

控え室にいる間、周りをチラチラ見ながら「あ、この子は幼稚舎っぽいなぁ」「縁故ある子かな?」と妄想を膨らませてしまう。(そんな時間があるなら我が子を見て!と当時の自分に言いたい。)

同じ日に試験をしている学校が多いからか、欠席している方もいた。ということは、ここに来ているのは縁故ありのガチ勢か、なんちゃって願書を出した層か。この教室からご縁をいただけるのは、確率から入って2人。その中に娘は入るのだろうか。自然と「実質倍率は何倍だろうか」と頭の中で計算してしまう。

そんなことばかり考えてしまっていた。今思えば、目の前にいる娘に集中すべきだった。

ついに試験の時間が来た。

もうここまで来たのだ。あとは娘の頑張りと運だけである。私は満面の笑みを浮かべて娘を送り出した。……いや、あの笑顔は控え室にいる先生へアピールすべく、引きつっていたかもしれない。

同じ部屋の子が順番に出て、廊下に並んでいく。そして、いつぞやの過去問や書籍で見聞きした、あの「お約束」の説明を受けている。耳をダンボにしながらその約束を聞いていたのは、私だけではないと思う。

説明が終わると、子どもたちはゾロゾロと歩き出していった。小さな背中が廊下の向こうに消えていく。

娘たちが去ったあと、やることのない親たちは、試験終わりまで校舎の外で過ごすことになる。

私は広尾駅近くのカフェの席を取り、頭に入ってこない本を読んで時間を過ごした。カフェには、さきほど同じ部屋から娘を送り出したお母さまもいた。同志のような、ライバルのような、不思議な距離感。

本を読んでも頭に入ってこないので、スマホで幼稚舎のホームページを改めて眺めた。

慶應義塾幼稚舎
慶應義塾幼稚舎の公式サイトです。幼稚舎の教育の特色や、入学に関する情報等、各種情報を発信しています。

……確かに、三つ編みの子などいない。ポニーテールの活発な子ばかりだ。

私の学校研究の至らなさに、血の気が引いた。とはいえ、もう娘は試験中だ。願書の写真も三つ編みで撮ってしまった以上、我が家の本日の髪型は三つ編み一択だったのだ。

そもそも、みなさん、今日は他の学校を受けないのか?これからハシゴするなら三つ編み一択なんじゃ?もしや、願書の写真を学校別に髪型を変えて撮っているのか?

考えれば考えるほど、他のご家庭の「幼稚舎にかける意気込み」を感じた気がした。

長いような短いような待機時間を終え、再び校舎で試験終わりの娘を待った。

これが幼稚舎に入る最後の機会かもしれない。そう思いながら。

しばらくして、廊下から足音が近づいてきて、順番に子どもたちが教室に入ってきた。

衝撃だったのは、体操服のポケットに手を突っ込んだまま歩いてくる子がいたことだ。数時間の考査で子どもの素の姿が出るというのは、本当なのだ。うちの娘は……と一瞬ヒヤッとしたが、少なくとも手はポケットの外に出ていて、心から安心した。

頑張って考査を終えた娘をハグして、上履きから靴に履き替えさせた。数時間とはいえ、数年間頑張ってきた娘を観ていただいた。そのことに感謝しながら、幼稚舎を後にした。

帰り道、天現寺橋の歩道橋を歩いていた時、はやる思いを抑えきれず「どうだった?」と聞いてしまった。

娘は言った。「楽しかったよ。受かってるんじゃないかな?」

私は天現寺橋の上で爆笑した。そして「そうだといいね」と応えた。

我が家がこの日に受験するのは幼稚舎だけだった。小腹が空いたので、近くのお店で娘からの聞き取りも兼ねて食事をし、ジャックから事前にもらっていた用紙に娘から聞き取った試験内容を無我夢中で書き留めた。その後、少し心を落ち着けてからジャックへ向かった。

娘はジャックでジュースやお菓子(だった気がする)をもらえてご満悦。同じ時間帯、もしくは次の時間帯に受験しただろう女の子と並んで試験で描いた絵や体操を意気揚々と披露していた。試験内容もけっこう覚えていたので、情報提供という意味では貢献できたのではないだろうか。

正直、女の子のお受験の場合、他の学校では体操はほとんど出ない。娘がジャックで体操をする姿は、これで見納めだ。3年間、よく頑張った。感慨深いものがあった。

とはいえ、我が家は翌日も試験がある。どこも高倍率の難関校ではあるが、幼稚舎に比べたらご縁をいただける可能性がある学校。家に帰って、再び気を引き締めて段取りと持ち物の確認をした。

ひとつだけ後悔していることがある。当日の写真を撮っていないことだ。体操服で本番の試験に向かうのは、あの日しかなかった。勿体無いことをした。これから受験されるご家庭は、ぜひ玄関先での一枚を残してあげてほしい。

こうやって思い出して書いてみると、当日の記憶が蘇ってきます。と同時に少しずつ記憶が薄れていくのも事実です。他校の受験当日もそうですが、特に幼稚舎の試験当日は本当に貴重な体験となりました。これから幼稚舎に挑む皆さまに、良いご縁がありますように。

その他、幼稚舎に関する記事はこちらにありますのでご参考ください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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