前編では女子が慶應義塾幼稚舎を第一志望とすることの難しさを倍率や多方面の対策の必要性からみてきました。それでもなお、表立っては言わないものの幼稚舎を志望する家庭は多いと思います。幼児教室ではそれを『第一志望』ではなくその上の『熱望校』と表現していました。
今回は「狭き門なのはわかっている。他の学校とは違う難しさがあるのもわかっている。けれどもやっぱり気になる!」という家庭が確認すべきことをまとめてみました。

家庭の教育方針と合致していますか?
家庭の教育方針が合っているかどうか、これは本当に大切です。同じ私立小学校の括りといえども学校によって創立者の理念や目指すべき姿は異なります。これはどの学校正しいかということではなく思想の問題です。
私立小学校を検討されるくらい教育熱心な家庭であればあるほど、第一に「まず獣身を成して而して後に人心を養う」ここに賛同しないと嚙み合わないと思います。過熱する中学受験を意識して幼少期から読み書きそろばん(現代では読み書き英語?)を先取りする家庭とは真逆の考え方です。
幼稚舎の教育については在校生に聞きたいところですが、知り合いのツテで探すのはとても難しいです。しかし、幼稚舎に関する書籍はたくさんあります。福澤諭吉の本だけではなく幼稚舎教諭の方の本もあります。年を経ても根本的に変わらない思想は福澤諭吉の本から、近年の教育に関しては先生の本を通して自身の家庭との価値観が一致するかどうか確認してみてください。
通常であれば私立小学校に関する書籍は一般には出版されておらず、その学校の考えを知るためには学校説明会などのイベントに参加するしか術はありません。ここに関しては一般家庭にも平等に機会が与えらている良い所だと思います。
まずは前編でもご紹介した入門編…



続いて中級編。
慶應義塾横浜初等部の課題図書になっている福翁百話と伝記小泉信三です。横浜初等部の課題図書は突然変わることがあるので必読とは言い切れませんが、横浜初等部の出願も考えているのであればいずれ読むことになります。個人的には福翁自伝の方が物語口調でサクサク読めましたが、福翁百話は説法めいていて少し時間がかかりました。


最後に上級編。
幼稚舎の舎長さんや教諭さんの本になります。家庭教育のすすめは分厚い本ですが幼稚舎の歴史や福翁自伝・福翁百話を補足する考え方などがびっしり記載されています。
Thinking Baseballは高校野球の本かと思いきや違います。2023年夏の甲子園を優勝に導いた慶應高校野球部の森林監督、実は幼稚舎の先生なんです。その先生がどういった教育を理想としているかがヒシヒシと感じられる本となっています。こちらはとても読みやすい本となっていますのでお受験に関わらず教育本としてもおすすめとなります。


お子さまは幼稚園・保育園で目立つ子ですか?
ご家庭の教育方針と幼稚舎の校風に違和感がないことを確認したら、次はお子さまに適した環境であるかの見極めです。
例えば、体操が得意ではない子に必要以上に片足バランスや走り込みをさせても可哀想なことになります。日常生活に支障をきたすほどであれば話は別ですが、慶應対策に必要とされるほどのことをしなくても、他校(特に女子校)であれば合格圏内であるお子様は山ほどいるのです。
よく、幼稚舎に合格する子は「光る子」と呼ばれています。
これは点数化できない『何か』なので、とても言語化するのは難しいです。
しいて言うのであれば、目線がしっかりしている、姿勢がしっかりしている、大人とでも堂々としゃべることができる、特定のことや世の中のことに対して好奇心が旺盛である、といったところでしょうか。
わかりやすい例でいうと天才子役の子供たちかもしれません。
昔であれば芦田愛菜ちゃん、最近であれば村山輝星ちゃんといった子です。(輝星ちゃんはまさに名前の漢字のごとく…ですね。)
卒業生ということであればバイオリニストのHIMARIさんもザ・幼稚舎生という雰囲気があり参考になります。(ちょっとキラキラオーラがずば抜けている気もしますが…)

天才子役や世界を股にかけて活動する音楽家…とまでとはいかなくても、お受験園でないのであれば、幼稚園・保育園の中で一目置かれる存在であるかどうかは見定めた方がよいと思います。
我が子であるがゆえに身びいきしてしまい、客観的に判断するのは難しいかもしれませんが、先取りによって得た学力ではなく、自他ともに「〇〇ちゃんなら小学校受験するのも納得」と思われるような存在であり、運動会やお遊戯会などのイベントで目を引く存在であるかどうかです。必ずしもリーダー役である必要はありません。どちらかというとクラスの人気者であるかどうか…です。

お子さまの制服姿を想像できますか?
これは幼稚舎に限った話ではありませんが、学校により生徒さんが醸し出す雰囲気・気風といったものがあります。
決して美男美女ばかりのビジュアル採用をしているわけではありませんが、どことなくその学校に合っている子、もっとわかりやすくいえば『その学校の制服を着て違和感がない子』が多いです。
幼稚舎だけではなく、もし気になる学校があったら、登下校の時間に最寄りの駅に行ってみて制服を着た生徒さんの『顔つき』を見てみると参考になると思います。在校生の顔つきと我が子を重ねてみて、合う合わないを想像してみてください。これは親の直観に頼るところであり、判断が合っているかどうかはとても難しいです。意外と他人の子の方が〇〇小学校が似合うね!というのがわかったりします。
登下校の時間は働いて行けません!ということであればホームページの動画を見るだけでも参考になります。余談ですが、小学校受験では三つ編みや編み込みが主流なのに対し、慶應対策クラスの女の子はポニーテールのやショートボブの子が多かったのも納得です。
個人的には、幼稚舎の子は体系がスラっとしていて、目がキリっとしていて引力を感じるような魅力的な子(ぱっちり二重とかそういうわけではなく…)、活発な子が多い印象を受けました。
考査内容を理解していますか?
家庭の教育方針と子供の適正が見極められたら考査内容を分析することをお勧めします。
一言で小学校受験といえども学校別の考査の内容は異なります。その中でも幼稚舎の試験は独特です。
巷では2つの生き物を合わせて新しい生き物を考える合体シリーズや、宇宙人に地球の良い所を紹介しよう!といった創造性が求められる課題ばかりが注目されますが、「今度のお休みにはどこへ行って何をしたいか」というような普段の生活の延長線上にある課題も出ています。特に女の子の試験の方がその傾向が強いと感じますし、生まれ月によってもその難易度は変わってきます。
そこを知らずにロボットや妖怪だ…の知識を入れても意味がないのです。
逆に、体操に関しては高頻度で出る片足バランス・飛行機バランス、サーキットでのゴム飛びやスタートの姿勢などある程度予想ができるのです。受験体操で対策する項目は縄跳びや逆上がりなど様々ありますが、ある程度、的は絞れるのに全方位で頑張ってもこちらも時間のロスになります。(ただ、目標に向かって頑張った時間は無駄にはならないと思います。)
そのためにも過去問分析は必須です。
過去問は伸芽会、こぐま会、理英会などの幼児教室から出版されていますが、幼稚舎に関してはペーパー試験がないため伸芽会のものが一番おすすめす。なぜかというと、最も長い過去15年分の試験内容がイラスト付きで記載されおり、生徒数も多いため聞き取り量も多く他の幼児教室より正確な内容となっている可能性が高いためです。伸芽会の過去問はA4縦で切り離しもしずらいためペーパー対策には不向きなのですが、幼稚舎に関しては最も情報量が多く参考になります。


受験することを決めたら…
過去問を分析し、幼稚舎を目指すことを決めたら、少しずつ幼稚舎考査で頻出のゲームや体操グッズを買い足していくことをお勧めします。例えば、実際の行動観察の考査で出た〇×ゲームの進化バージョンやネズミのチーズ取りゲーム、4目並べです。


実際の考査にでたゲームだけではなく対象年齢が6歳前後のボードゲームを試してみるのも良いです。オセロやUNOでも入り口としては問題ありません。考査にそのままでなくても家族みんなで楽しめると同時に思考力が向上するため、お受験に関わらず教育上お勧めします。
また、体操の玉入れ(下投げ)や行動観察の輪投げ対策としてお風呂で遊べるグッズを用意するのもよいです。特に女の子は玉入れ・玉投げは習得するまでの時間がかかるため、年少・年中の頃から日頃から投げる環境を整えた方がよいと思います。
↓はアンパンマンなので弟や妹がいるご家庭にはもってこいです。バイキンマン目掛けて上投げの練習も可能。アンパンマンのほかにもキティちゃんやはらぺこあおむしの玉入れもあります。

幼児教室は試験予想が的中したというけれど?
過去問を分析していくうちに「あれ?」と思ったことがあります。
それはとある幼児教室の説明会に「〇〇年度の考査で〇〇の出題がありましたがこれも的中しました!」ということを営業トークにしているのです。
幼稚舎の考査においてはまず体操が的中しました!というのは真に受けない方がよいでしょう。なぜなら毎年ほとんど一緒ですしバリエーションがあったとしても想定の範囲内だからです。
次に絵画・工作や行動観察(ゲーム)についてもレベルは違えど同じことが言えます。
通常、幼児教室の学校別クラスであれば過去問をベースに似たような課題を取り組みます。回数は約40回+季節講習分ありますので、直近5~10年くらいの過去問はどの教室でも体験できることになります。毎年斬新な行動観察が生まれるわけでもないので、実際の考査も数年前の〇〇に似ている課題が出たりするのです。また、試験日は複数日にまたがっており、何日かの課題のうち、一つくらいは当たる可能性はあるのです。それを表立って「的中しました!」といわれましても…単に過去問をそっくりそのままやっていただけでは…と言いたいところです。同年代のお子さまと網羅的に過去問を実践させてくれるだけでも有難いことには変わりはないのですが…。
お子さまは何かに没頭しているものはありますか?
都内の高倍率の学校になってくると、単にお勉強ができるや悪目立ちしない以上に、お子さまの長所のアピール合戦となってきます。
我が子は何を『持ち味』として挑んでいくか、じっくり観察して見極めていきましょう。
男の子だと昆虫、動物、魚、恐竜など生き物系や水泳、かけっこなどの体操系が多いですし、女の子はそれに加えて歌と踊りが多くなります。ご覧の通りよく被ります。
被っても問題はないというか、被らない方が珍しいです。被ったとしても、その子が興味のあるもの、楽しんでいるものを見つけたら、その興味を深めるべく保護者がどのような環境を整えてあげたのか、が重要になります。
近年は勝負絵と呼ばれているあらかじめ準備した絵を描かせない工夫がされていることもあり、どんなに頑張っても、その子の興味にある分野そのものが考査にでることは稀です。良くて願書のエピソードに書くことができる程度です。それでも、興味があることを親子で楽しんで体験してきた積み重ねが、長期的にお子さまのキラキラした目に繋がると信じて突き進むのみです。
最後に大切なこと ーどんなことも無駄にはならないー
過去問を見たことがある方であれば、幼稚舎の考査はお子さまの地頭の良さ、知力、体力とそれを培ってきた家庭環境(親子の関わり)を見る内容であるため、点数化できない難しさがあることがすぐにわかると思います。
これは中学受験のようになるべく先取り学習をし、朝から晩まで勉強していれば得られるものではありません。(中学受験も全員が頑張っており、どの子も勉強すれば難関校に合格できるわけではありませんが…)
試験結果を点数化できないことは小学校受験全般にいえますが、幼稚舎に至ってはそれが顕著です。だからこそ縁故のある家庭しか入れない…と言われてしまうのかと思います。
幼稚舎であろうがなんであろうが、小学校受験に向けた取り組みで無駄になるものはありません。
たとえご縁がなかったとしても、幼稚舎を目指して取り組んだ日々が楽しかったと思えれば必ずその子の血肉となり将来に繋がっていくんだと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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